戦後成長神話の完全崩壊

2016年5月28日付け高知新聞夕刊に『高知県の空き家が6戸に1戸』という記事が掲載された。

政府の戦略ミスによる外国産木材の大量流入で山の管理が統制できなくなってから久しいが、既に空き家対策もこの段階に入りつつある。「空き家対策特別措置法」によって6倍の税、つまり更地と同じ固定資産税を払わせるという手法が正しいかどうかが問われる。

しかし、それは明らかに正しくはないだろう。なぜならば、あらゆるヒト・モノ・カネが右肩上がりに成長した”戦後の成長神話”を哲学的に乗り越えていないからである。

人口減少時代に、新しい家を作り続けていくのをやめずに、古い家を壊すことを推奨するというのは、経済思想的にも、現実的な経済面でも完全に狂っているとしか言いようがない。やるべきことは、作るエネルギーを維持管理するエネルギーに付け替えることであり、家1軒を新たに創造することよりも、家6軒を新たに創造的に管理する能力が求められている。つまり、これが古民家再生(リノベーション)の能力であり、その家を新たな拠点(ゲストハウス、カフェetc)にする(イノベーション)の能力なのである。

この考え方に到達するためには、成長神話という洗脳装置を脳から取り除かなければならない。会社に勤めて厚生年金を払いながら35年ローンで家を買うという構造自体が馬鹿らしいのだという考えに思い至らなければならない。材料もある、場所もある、労働力も持っているにも関わらず、自分のためではなく≪戦後成長神話というファラオ≫のためのピラミッド建設に自ら進んで使役している人たちは、社会貢献ではなく、権力増長への私的加担をしているということに気付かねばならない。その≪アンチテーゼを唱えられない脳の構造≫が、ブラック企業をのさばらせ、原発を延命させ、政治を混迷に落とし込めている根源的な原因であるということにも早く気付く必要があるだろう。だからこそ、現代日本人には今こそ、哲学的思考(アンチテーゼを唱えられる力)が必要なのである。

- 一体、誰のための幸福か? -

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1人よりも10人いれば、かなりのことが可能になる。にも関わらず、現代日本人の集団が、たちまち不公正で非効率に陥る原因とは何か?それは、効率が悪いわけでも公平さがないわけでもない。ましてや言いたいことを皆が言えないわけでもない。不公正に立ち向かうだけの哲学(正義、根拠)を持ち合わせていないだけである。この哲学を失わせたのは、良くも悪くも”科学”である。科学とは異なる解釈を許さない。解釈とは、千差万別の正義である。それが民主主義あるいは人権のファンダメンタルズになっているにも関わらず、日本人は自らそれを行使しようとはしない。行使できないからこそ他者を攻撃する。これが現代日本社会のプリンシパルである。この日本人メンタルのデフレーションは、経済のデフレ―ションよりも深刻だ。

-科学は哲学から生まれたが、哲学は科学から生まれたわけではない-

自らの幸福が35年ローンの足かせならば、われわれはエジプトのピラミッド使役の時代よりも不公正で非効率な時代に生きていることを自覚せねばならない。日本人は無宗教だと言うが、無宗教の状態でこのようなトチ狂った奴隷社会に集団で進むことはできない。まずは、われわれが強烈な催眠状態にかかっているということを自覚する必要があるのだ。

そこを脱して初めて、われわれはわれわれ自身によって新たなる成長神話を手に入れるのである。

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